特養(特別養護老人ホーム)への入所を検討する際、最も気になるのが「実際、毎月いくらかかるのか」という費用の目安ですよね。
「特養は公的施設だから安い」と聞いていても、ネットで調べると「月10万円以下」という声もあれば「月15万円以上かかった」という声もあり、混乱してしまう方も少なくありません。
実は、特養の月額費用は「選択する部屋のタイプ(居室種類)」と「ご本人の収入状況(所得段階)」の2つによって、全く異なる料金になります。
この記事では、特養にある4つの部屋タイプの特徴と具体的な費用の目安、そして自己負担を抑えられる国の減免制度(補足給付)について、わかりやすく解説します。
特養の費用を左右する「4つの部屋タイプ」と特徴

特養の月額費用は、主に以下の4つの合算で決まります。
- 介護保険サービス料(要介護度に応じた自己負担分)
- 居住費(部屋代)
- 食費
- 日常生活費(日用品や理美容代など)
このうち、毎月の支払額を最も大きく左右するのが「居住費(部屋代)」です。特養には大きく分けて4つの部屋タイプがあり、プライバシーの度合いやケアの体制が異なります。
① ユニット型個室

10室前後を1つの「ユニット(生活単位)」とし、専用の共有リビングを囲む完全個室タイプ。手厚い介護が受けられ、現代の主流になっています。
② ユニット型個室的多床室

完全な個室ですが、大部屋を間仕切り(壁など)で区切ったタイプ。
③ 従来型個室

ユニット化されていない、独立した1つの個室タイプ。
④ 従来型多床室

いわゆる「相部屋(4人部屋など)」。プライバシーは少なめですが、費用を最も安く抑えられます。
※ 厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」より
【最新版】部屋タイプ別の月額費用目安(一般所得の場合)

要介護度3で一般的な所得(住民税課税世帯など)の方が、負担軽減制度を使わずに実費で支払う場合の、1ヶ月あたりの総額目安です。近年の光熱費・食材費高騰による基準額改定を反映しています。
(※ 食費・居住費・介護サービス自己負担額(1割負担)・日常生活費(1万円と仮定)を含めた概算の目安です。)
| 部屋のタイプ | 特徴・プライバシー | 月額の総額目安(一般所得) |
| ① ユニット型個室 | 完全個室+手厚いユニットケア(主流) | 約 130,000円 〜 150,000円 |
| ② ユニット型個室的多床室 | 大部屋を壁で仕切った個室空間 | 約 120,000円 〜 140,000円 |
| ③ 従来型個室 | 独立した個室(ユニットケアなし) | 約 110,000円 〜 130,000円 |
| ④ 従来型多床室(相部屋) | 4人部屋などの相部屋(最も安価) | 約 80,000円 〜 110,000円 |
上記はあくまで一般的な目安です。要介護度(4〜5など)による介護保険料の差や、医療費、日用品・実費(散髪代など)によって前後します。
※ 厚生労働省「令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス 費の見直し等に係る周知への協力依頼について」より
知らないと損!費用を大幅に安くする「補足給付(特定入所者介護サービス費)」

「親の年金は月8万円しかないから、毎月13万円も払えない…」と諦める必要はありません。
特養のような公的施設には、所得の低い方の負担を減らす「特定入所者介護サービス費(補足給付)」という国の制度が用意されています。
これは、簡単に言うと「所得が低い人(住民税非課税世帯など)の食費と部屋代を、国が補助して引き下げる」仕組みです。
対象となる条件
本人だけでなく「世帯全員が住民税非課税」であることに加え、預貯金などの資産が一定額以下(単身で500万円〜1,000万円以下など、所得段階に応じる)であることが条件となります。
補足給付(負担限度額認定)が適用された場合の費用イメージ
この制度が適用されると、所得に応じて「第1段階」から「第3段階」に振り分けられ、食費と居住費が以下のように大幅に減免されます。(※ 令和8年8月1日から)
| 所得段階の目安 | 従来型多床室(相部屋)の場合(食費 + 居住費) | ユニット型個室の場合(食費 + 居住費) |
| 第1段階(生活保護受給者など) | 月額 約 9,000円 (9,000円 + 0円) | 月額 約 35,400円 (9,000円 + 26,400円) |
| 第2段階(公的年金等収入 80万円以下) | 月額 約 24,600円 (11,700円 + 12,900円) | 月額 約 38,100円 (11,700円 + 26,400円) |
| 第3段階(公的年金等収入 80万〜120万円) | 月額 約 33,300円 (20,400円 + 12,900円) | 月額 約 61,500円 (20,400円 + 41,100円) |
(※ 厚生労働省「令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス 費の見直し等に係る周知への協力依頼について」より)
ココに注意!近年の法改正による負担増
近年の物価高・食材費高騰を受けて、国が定める食費・居住費の「基準費用額」や、負担軽減対象者(特に第3段階など)の日額自己負担限度額が数十円〜百数十円単位で引き上げられています。古いパンフレットの料金のまま計算していると、現在の実際の請求額とズレが生じることがあるため、必ず最新の料金表を確認しましょう。
要注意! 基本料金に含まれない「医療費・薬代」は別で準備を

特養の月額費用(基本料金)に含まれず、毎月「別枠」で請求される要注意の出費があります。それが「医療費」と「お薬代」です。
特養には配置医師(施設嘱託のドクター)がいますが、外部の病院を受診したり、薬を処方されたりした際の費用は、医療保険の自己負担分として毎月の施設利用料とは「別」に請求されます。
- 外部病院の受診費用・往診費用
- 処方されたお薬代
- 理美容代(散髪代)
- 特別な日用品(施設指定外のおむつや私物など)
- 有料のレクリエーション参加費
基本料金にプラスして、毎月1万〜2万円程度は「医療費・雑費枠」として余裕を見ておくと、家計に負担をかけずに安心して運用できます。
親の年金額と部屋のタイプをすり合わせよう

特養の費用は、民間施設に比べれば非常に抑えられていますが、それでも一般所得で「ユニット型個室」を選べば毎月一定の負担になります。
まずは、以下の3ステップでお金の見通しを立ててみましょう。
- 親の「正確な年金受給額」と「預貯金額」を把握する
- 「住民税非課税世帯」に該当し、補足給付が受けられそうか確認する
- 地域の特養の見学時に、実際の料金表(最新版)をもらう
家族だけで抱え込まず、施設の生活相談員やケアマネジャーに「この収入だと、月々いくらくらいになりそうですか?」と具体的にシミュレーションしてもらうのが一番の近道です。
次のステップへ進みましょう
特養の条件や費用がわかったところで、「特養は待ち人数が多くてすぐには入れそうにない」「退院後、リハビリをしてから自宅に戻る方法はないか?」と悩まれる方もいます。
そんなときに有力な選択肢となるのが、もうひとつの公的施設である「介護老人保健施設(老健)」です。次の記事では、老健の入所条件と申込方法について詳しく解説します。


