「老後の住まいを探しているけれど、有料老人ホームは高すぎる…」
「特養(特別養護老人ホーム)は要介護3以上だし、空き待ちが長くて入れない…」
そんな方の選択肢として注目されているのが「軽費老人ホーム」です。国や自治体からの補助金や助成金を受けて運営されているため、比較的安価な料金設定が最大の魅力です。
この記事では、制度が少し複雑な軽費老人ホームの種類や特徴の比較、入居の条件、費用の目安と内訳、費用を抑える制度、申込方法と入居までの流れなど、失敗しない選び方をわかりやすく解説します。
軽費老人ホームの基本と「4つの種類(A型・B型・ケアハウス・都市型)」

軽費老人ホームとは、身寄りがない、または家庭環境や経済的な理由により、自宅で一人暮らしを続けることが不安な高齢者が、低額な料金で利用できる施設です。
食事の提供や入浴等の準備、見守りや緊急時対応、常勤の生活相談員による相談及び援助、その他の日常生活上に必要な便宜を提供してもらえます。
現在、軽費老人ホームは制度上4つのタイプに分かれますが、新設の中心は「ケアハウス」と「都市型軽費老人ホーム」です。
- A型(食事付き・従来型):
自立〜軽度の方向け。施設内で食事が提供されます。※現在は新設されておらず、既存の施設のみ。 - B型(自炊型・従来型):
自立〜軽度の方向け。食事の提供がなく、自炊が原則。必要に応じて外部の配食サービス等を利用する場合もあります。※こちらも現在は新規建設がほぼありません。 - ケアハウス(旧称・説明上「C型」と呼ばれることがあります):
現在の主流です。バリアフリー化された個室で、食事や洗濯などの生活援助を受けられます。ケアハウスの中には、外部の介護サービスを利用する「一般型」と、施設のスタッフが介護を提供する「介護型」の2種類があります。 - 都市型軽費老人ホーム:
地価の高い都市部(東京都内など)でも整備が進むよう、居室面積や職員配置の基準を緩和した、ケアハウスに近いサービスを提供する、都市部向けの独立した軽費老人ホームの類型です。詳しくは後述します。
出典:「養護老人ホーム及び軽費老人ホーム・ケアハウスの概要」(厚生労働省)
軽費老人ホームの入居条件(年齢・介護度・所得制限)

軽費老人ホームは公的な側面が強いため、入居条件が明確に定められています。
- 年齢条件
原則として60歳以上(夫婦で入居する場合は、どちらか一方が60歳以上であれば可)。ただし、「介護型ケアハウス」に限り、原則65歳以上が入居条件となります。 - 身体状況
基本的には、自分の身の回りのことができる「自立」〜「軽度の要介護」の方が対象です。ただし、「介護型ケアハウス」に限り、原則要介護1以上の認定を受けた方が対象となります。 - 経済的・家庭環境の条件
「一人暮らしに不安がある」「家族からの援助を受けることが難しい」といった理由の方が対象です。
ただし、A型・B型には所得等に関する入居要件があります。自治体(市区町村)や施設によって異なっているので、事前に確認が必要です。
ケアハウス・都市型は所得上限を入居条件として設けているわけではありませんありませんが、いずれのタイプも所得が低い方ほど費用面での優遇(減免措置)が大きくなる仕組みです。
出典:
「 養護老人ホーム及び軽費老人ホーム・ケアハウスの概要 」(厚生労働省)
「 介護保険制度の概要 」(厚生労働省)
「 軽費老人ホーム 」(WAM NET)
A型・B型・ケアハウス・都市型の費用と特徴の比較

それぞれのタイプで「主な特徴と、いくらかかるのか」を、料金表にまとめました。
| タイプ | 主な特徴 | 月額費用目安 |
|---|---|---|
| A型(食事あり) | ・食事提供あり ・自立〜要支援向け | 約6.5万〜15万円 |
| B型(自炊) | ・自炊が原則(食事なし) ・自立の方向け | 約4万円程度 ※食費は別途実費 |
| ケアハウス一般型 | ・現在の主流(個室化・バリアフリー対応) ・介護時は外部サービスを個別契約 | 約9万〜15万円 |
| ケアハウス介護型 | ・施設スタッフが介護を提供 ・原則要介護1以上が対象 | 各施設・要介護度に よって異なります |
| 都市型軽費老人ホーム | ・入居定員20人以下(個室化・バリアフリー対応) ・介護時は外部サービスを個別契約 | 約9万〜15万円 |
※上記は目安であり、施設や自治体、収入によって差があります。詳細は各施設にご確認ください。
出典:「 養護老人ホーム及び軽費老人ホーム・ケアハウスの概要 」(厚生労働省)
ポイント:なぜ金額に「幅」があるのか?
軽費老人ホームの月額費用は、「入居者本人の前年の収入(年金所得など)」に応じて段階的に減免される仕組みになっているためです。収入が少ない人ほど月額料金が安く抑えられます。
月々の費用の内訳
軽費老人ホームの基本的な利用料の内訳です。
- サービス提供に要する費用(生活相談・見守りなど)
- 生活費 (食材料費、共有部分の光熱水費など)
※ B型は食材料費等を除く - 居住に要する費用 (家賃・管理費など)
- その他 (居室の光熱水費、冬期暖房費など)
ケアハウス介護型は、上記費用に 『介護保険サービス費(自己負担分1~3割)』 が追加されます。
出典:「 【資料10】全国老施協説明資料 」(厚生労働省)
都市部で探すなら「都市型軽費老人ホーム」も選択肢に
都市型軽費老人ホームは、土地が高くて大型施設が建てにくい東京都内や大阪市などで、地価の高さを考慮して居室面積や職員配置などの基準を緩和して作られた少人数制(定員20人以下)の施設です。
入居一時金が不要で、月額利用料も概ね9万〜15万円程度(収入に応じた減免後の金額)に抑えられているのが特徴です。対象は主に施設所在の区市に住民票がある60歳以上で、自立〜軽度の要介護の方です。
東京都内で「安価なケアハウスを探したいけれど空きがない」という場合は、都市型軽費老人ホームを選択肢に入れるのも有効な手段です。
出典:
「 養護老人ホーム及び軽費老人ホーム・ケアハウスの概要 」(厚生労働省)
「 都市型軽費老人ホーム 施設の特徴と事例 」(東京都福祉局)
軽費老人ホームの利用料を抑える仕組み(制度)

月額費用そのものが収入に応じて減免される仕組みに加えて、以下の制度を組み合わせることでさらに負担を抑えられる場合があります。
サービス提供費(事務費)の減免
軽費老人ホームの月額費用のうち「サービス提供費(事務費)」は、前年の収入に応じて自治体が定める基準額まで段階的に引き下げられます。特別な手続きなしに、収入認定の結果に応じて請求段階から金額が変わる点がポイントです。
補助金額や条件は各自治体や施設ごとに異なっているので、事前に確認しておきましょう。
例)東京都の軽費老人ホーム(ケアハウス)・都市型軽費老人ホーム
※ 細かく設定されているため18区分より一部抜粋しています
- 本人の対象収入 150万円以下 / 費用負担額(月額) 1万円
- 本人の対象収入 200万円超~210万円 / 費用負担額(月額) 3万円
- 本人の対象収入 240万円以超~250万円 / 費用負担額(月額) 5万円
- 本人の対象収入 300万円以超~310万円 / 費用負担額(月額) 9万2,000円
- 本人の対象収入 310万円超 / 費用負担額 全額
※ 対象収入とは、前年の収入から租税・社会保険料・医療費などの必要経費を控除した後の収入です。
出典:「 東京都軽費老人ホーム利用料等取扱要綱 」(東京都福祉局)
高額介護サービス費
介護保険サービスの自己負担額(1〜3割)が、所得区分に応じた1ヶ月あたりの上限額を超えた場合、申請により超過分が払い戻される制度です。
世帯全員が住民税非課税の場合は月額24,600円、年金等の収入+その他の所得の合計が80.9万円以下の方は個人で15,000円、生活保護受給者は15,000円が負担の上限額です。
ただし、食費・居住費・日常生活費などは対象外で、主に介護型ケアハウスの介護サービス費や、外部の訪問介護等を利用した際の自己負担分が対象になります。申請先は市区町村の介護保険担当窓口です。
出典:「 サービスにかかる利用料 」(介護サービス情報公表システム)
軽費老人ホームの申込方法と入居までの流れ

軽費老人ホームの申し込みは、原則として希望する施設へ直接申し込みを行います(一部の自治体や施設では区役所・市役所の福祉課を経由する場合もあります)。
公的な助成を受けている施設は利用料が抑えられるため、人気があります。特別養護老人ホーム(特養)ほどではありませんが、施設によっては待機者がいることもあるため、早めに問い合わせて空室状況を確認しましょう。
余裕を持ったスケジュールで進めるのがポイントです。
- 情報収集:
自治体の高齢者福祉課や地域包括支援センターで施設リストを取得し、気になる施設からパンフレットや最新の利用料金表を取り寄せます。 - 施設見学:
事前に予約を入れて見学します。共用スペースの清潔さ、食事の内容、他の入居者の雰囲気、スタッフの対応などを自分の目で確認します。 - 入居申込:
施設指定の「入居申込書」を提出します。必要書類や保証人・身元引受人の要件、健康診断書の要否などは施設によって異なります。 - 面接・審査:
面談を行います。生活意欲や身の回りのことができるか(一般型・都市型の場合)、施設での受け入れ基準を満たしているかが審査されます。 - 契約・入居:
審査通過後、入居契約を締結します。保証金・敷金(設定されている場合)を納付し、引っ越し・入居開始となります。
手続き時のワンポイントアドバイス
軽費老人ホームは「収入に応じた事務費減免」があるため、書類審査で収入を証明する公的書類の確認が必須となります。前年分の確定申告書や年金振込通知書、所得課税証明書などは早めに手元に用意しておくと手続きがスムーズです。
出典:「【資料10】全国老施協説明資料 」(厚生労働省)
2026年現在の注意点:「物価高」と「介護報酬改定」の影響

初期費用(保証金・敷金)が抑えられ、月々の費用も安い軽費老人ホームですが、2026年現在は以下のコスト上昇リスクに注意が必要です。
入居を検討する際は古い情報ではなく、必ず「最新の料金表」を取り寄せるようにしてください。
① 食費・管理費のベースアップ
食材費・光熱費・人件費などの上昇を背景に、自治体や施設によって利用料が見直される場合があります。
実際に、介護報酬改定を踏まえた軽費老人ホームの利用料等の改定が自治体で行われています。
出典:「 老人保護措置費に係る支弁額等の改定及び養護老人ホーム及び軽費老人ホームの適切な運営について 」(厚生労働省)
② 2026年6月の介護報酬改定による影響
2026年は介護報酬の期中改定が行われ、6月から処遇改善分が反映されています。さらに8月からは、介護保険施設等の食費の基準費用額も引き上げられています。
軽費老人ホームについても自治体が利用料等を改定する場合があるため、必ず確認が必要です。
出典:「 令和8年度介護報酬改定について 」(厚生労働省)
特養やサ高住との違い

よく比較される他施設との違いをシンプルに整理しました。
- 特養(特別養護老人ホーム)との違い
特養は原則として「要介護3以上」の方が対象ですが、ケアハウス(一般型)・都市型は「自立〜軽度」の元気なうちに入居できます。 - サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)との違い
サ高住は民間運営の「一般的な賃貸住宅」に近い性質を持つため、費用は施設ごとに設定されます。一方、軽費老人ホームは所得に応じた利用料の仕組みがあるため、低所得の方は費用面で有利になる場合があります。
まとめ:失敗しない軽費老人ホームの選び方

軽費老人ホームは「費用を抑えつつ、個室のプライバシーを守って安心に暮らしたい」という方に最適な選択肢です。しかし、以下のポイントを必ず見学時に確認しましょう。
- 「要介護度が重くなったとき」に住み続けられるか:
要介護度が重くなったときや認知症が進行した場合、退去せざるを得なくなるケースがあります(介護型を除く)。提携の介護施設や病院への転居を求められるかなど、あらかじめ確認が必要です。 - 自分の所得だと実際の月額がいくらになるか:
施設のパンフレットに載っている「事務費・管理費表」と、ご自身の「課税証明書(年金決定通知書など)」を照らし合わせ、施設側に見積もりを出してもらうのが一番確実です。
人気のある施設は数ヶ月〜の待機が出ることもあるため、元気なうちから情報収集を始めておきましょう。
参考資料・出典



